これぞ 逆 仁 に 位 を 譲れ と の 神託 で あろ う と 範 貞 は 主張 する が 、 後醍醐 帝 は その 神託 に 偽り あら ば 必ず 神罰 を 蒙る で あろ う と 大音 で 述べる 勢い に 、 範 貞 も さすが に ひるん で 、 ひとまず 逆 仁 を 連れ て 退出 する 。
九郎 の 主人 で ある 駿河 守 範 貞 は 後醍醐 帝 の 后 で ある はず の 三 位 の 局 に 横恋慕 し て おり 、 九郎 は 範 貞 の ところ へ 連れ て 行く ため 局 を 捕らえよ う と する 。
六 波 羅 探題 の 常盤 駿 河守 範 貞 は 三 位 の 局 と 八 歳 の 若宮 を 家臣 の 永井 右 馬頭 宣明 ( ながい うま の かみ のぶ あき ) の もと に 預け て 監禁 し 、 ほか の 宮家 や 公卿 たち について も ほしい まま に 死罪 や 流罪 に 処す など 、 その 威勢 を 恐れ ぬ 者 は ない 有様 で ある 。
六 波 羅 の 範 貞 の もと に 斎藤 太郎左衛門 が 呼ば れ た 。
参上 し た 太郎左衛門 に 範 貞 は 、 朝廷 の 側 に つけ と 勧め た 娘 や 婿 に 逆らっ て 六 波 羅 に 忠節 を 尽くし た こと を 誉める が 、 太郎左衛門 は 「 忠 を 磨き 義 を 鉄石 に 比する は 勇者 の 守る 所 … 誉め られ たく も これ 無し 」 など と うそぶい て いる 。
範 貞 は 「 オオ その 繕 ひ なき 真っ直ぐ を 見込み 、 頼む 事 あり て 召し寄せ たり 」 と いっ て 呼び出し た 事情 を 聞か せる 。
範 貞 は いまだに あの 三 位 の 局 の こと を あきらめ ず 、 ちょうど 今 が 盆 な ので 、 永井 右 馬頭 の もと に 預け て いる 三 位 の 局 に 宛て 、 自分 の 局 に対する 思い を 表し た 盆 燈籠 を 送り つけ た 。
すると 局 から は その 返事 として 、 これ も 「 誰 が 袖 」 の 模様 と 、 秋 の 草花 に 車 を あしらっ た 燈籠 を 範 貞 に 送っ て き た 。
これら を 範 貞 は 、 局 の 承諾 の 返事 と 受け取っ て 喜び 、 局 を この 六 波 羅 へ と 迎え に 行く ため の 使者 の 役目 を 、 太郎左衛門 に 申し付けよ う と し た の で ある 。
しかし そんな 範 貞 の のろけ 話 を 聞い て い た 太郎左衛門 、 範 貞 を じろりと 見 て 、 その よう な 役目 は 御免 蒙る と へそ を 曲げ 、 取り付く しま も ない 。
花園 は 局 の 範 貞 へ の 贈り物 として 、 礒 打つ 波 に 帆掛け船 の 模様 が 入っ た 浴衣 を 持参 し て い た 。
それ を 差し出す と 範 貞 は 大 喜び し 、 帆掛け船 と は この 範 貞 に 「 ほ の 字 」 という 意味 で あろ う と 、 夢中 に なっ て その 浴衣 を 抱きしめる の で あっ た 。
しかし 範 貞 が 肝心 の 三 位 の 局 は なぜ この 六 波 羅 に は 来 ない の か と いう と 、 花園 は 、 後醍醐 帝 を 隠岐 より 移し 、 鳥羽 に 若宮 とともに 住まわ せる の で あれ ば 帝 と は 縁 を 切り 、 改めて 範 貞 の 意 に 従う と の 局 の 意向 を 伝え た 。
これ に いよいよ 機嫌 を よく し た 範 貞 、 局 の 望み を かなえよ う という の を 太郎左衛門 が さえぎる 。
今回 の 戦 の 首謀 者 で ある 帝 を 都 に 近い 鳥 羽 に 置こ う など と は とんでも ない こと 、 それ こそ 「 火打ち 箱 に 焔 硝 入れ て 昼寝 する より 危ない 事 」 だ と 猛 反対 し 、 永井 右 馬頭 が 局 と 範 貞 と の 仲 を 取り持と う する 追従 者 で ある か の よう に 言う の を 花園 は 聞きとがめ 、 太郎左衛門 と 口論 に なる が 、 太郎左衛門 は さらに 、 局 が 範 貞 に 贈っ た 燈籠 や 浴衣 の 意匠 が 、 じつは 範 貞 の こと を 嫌い 帝 を いまだ 慕っ て いる と の 意 を あらわし た もの で ある 事 を 暴い て しまう 。
それ まで 機嫌 の よかっ た 範 貞 は 、 局 の 真意 を 知らさ れ て たちまち 顔色 が 変っ た 。
花園 は 、 帝 の 還幸 が 叶わ ぬ という 心 で あろ う と 解く が 、 太郎左衛門 は 「 切子 」 と は 子 を 切る 、 すなわち 恋 の かなわ ぬ 意趣 返し に 若宮 を 斬れ と の 心 で あろ う と 解く と 範 貞 は 「 頓知 頓知 」 と 誉め 、 太郎左衛門 を 使い と し 、 今宵 の 子 の 時 まで に 若宮 の 首 を 取れ と いっ て 座 を 立と う と する 。
これ に 花園 は 慌て て 範 貞 に すがりつき 、 その 役目 は 永井 右 馬頭 に と 訴える が 、 範 貞 は 取り合わ ず 奥 へ と 入っ て しまっ た 。
右 馬頭 が 問いただす と 、 斎藤 太郎左衛門 が 局 が 贈っ た 燈籠 や 浴衣 について 散々 悪しざま に 言っ た せい で 範 貞 が 激怒 し 、 太郎左衛門 も じきに この 館 に 来る 、 口惜しい と 泣き ながら 話す 。
じつは 大 弥太 は 都 へ 行っ て 六 波 羅 の 範 貞 の ところ へ 出向き 、 お尋ね者 の 大塔 宮 を 捕まえ て 差し出せ ば 、 その 功 に 和泉 国 の 大名 に しよ う と いわ れ た の で ある 。