教練 は 班 ごと と 云う の で は なく 、 中隊 の 初年 兵 を 中隊 附 将校 から 出る 初年 兵 掛 教官 が 教育 計画 に従って 行い 、 最初 は 中隊 の 初年 兵 を 適宜 に 区分 し て 分隊 規模 、 教育 期間 が 進む につれて 小隊 規模 、 中隊 規模 と 進ん で いく 。
班長 ・ 班 付 は 助 教 として 教官 の 補助 を し 、 更に 二 年 兵 の うち から 助手 が 出 て 模範 動作 を する など し て 教育 を 補助 し た 。
これ と は 別に 二 年 兵 を 教育 する 教官 も いる 。
一 年 志願 兵 ( のち の 幹部 候補 生 ) や 師範 学校 卒業 者 の 短期 現役 兵 、 原隊 入営 中 の 幼年 学校 生徒 など は それ だけ を 集め た 内務 班 ( 古兵 が 2 ~ 3 名 附く ) を 構成 する こと も あっ た が 、 普通 の 内務 班 に 混入 する こと も あり 、 兵科 兵種 、 部隊 や 時代 によって 異なる 。
動員 下 令 時 に は 応召 兵 が 班 に 入っ て くる ので 、 通常 の 班 内 秩序 が 崩壊 し 、 幹部 の 統制 が 及ば ない 混乱 が 生ずる こと も あっ た 。
また 今次 大戦 の 終戦 近く なる と 、 根こそぎ 動員 の ため 学徒 兵 と 中年 ないし 体格 劣弱 の 補充 兵 が 大量 に 班 内 に 起居 する こと に なり 、 幹部 も ほとんど が 老若 取混ぜ た 予備 役 応召 者 で 、 人間 関係 に さまざま な 葛藤 が 生じ た 。
また 人数 的 に も 平時 で は 定数 の 半数 程度 の 人員 ( 職業 軍人 及び 現役 兵 ) のみ で 構成 さ れ て いる 。
内務 班 に 所属 する の は 基本 的 に 徴兵 検査 で 選抜 さ れ て 兵役 を 送る 現役 兵 で あり 、 動員 が 下 令 さ れ 戦時 編制 と なっ た 時点 で 召集令状 ( 赤紙 ) によって 召集 さ れ た 応召 兵 が 配属 さ れ て 初めて 定数 に 達する 。
この ため 内務 班 に 収容 し きれ ない 応召 兵 を 兵営 近辺 の 学校 ・ 寺社 ・ 旅館 など に 分宿 さ せる 事 が 行わ れ た 。
兵科 兵種 により 部署 の 割当 方 に 精粗 あり 、 歩兵 で は 機関 銃 手 ・ 擲弾筒 手 ・ 弾 藥手 など 重火器 を 取扱う 兵 を 平時 から 決め て ある が 他 の 兵 は 一 括り に 小銃 手 と なっ て い たり 、 砲兵 で は 平時 より 細かく 出動 の 際 の 配置 を 予め 決め て あり 、 誰 それ は 何 番 砲手 、 何 番 砲車 御者 など と 砲 操作 ・ 弾 藥 補給 ・ 砲車 弾薬 車 運転 ・ 観測 ・ 通信 ・ 伝令 に 必要 な 要員 を 即座 に 組める よう に し て ある 。
幹部 が 不足 し て いる 場合 は 小隊 長 に 准尉 ( 特務 曹長 ) ・ 見習 士官 ( 曹長 ) ・ 曹長 を あて 、 分隊 長 に 古参 の 上等 兵 を 充てる こと も あっ た 。
応急 出動 の 場合 は 、 中隊 長 が とりあえず 下士官 兵 を 営庭 に 整列 さ せ 、 小隊 長 ・ 分隊 長 を 指名 し て 、 それに 分 属 する 兵 を 、 ここ から 何 人 目 まで は 第 1 分隊 と 指名 する など 臨機 の 方法 で 編成 を 行っ た 。
部隊 の 兵 は 聯隊 区 ごと に 徴兵 し 同 地方 出身 者 のみ で 構成 さ れる ので 、 私的 制裁 に も 地方 ごと の 特徴 が 出 て おり 、 東北 地方 に は 全く 制裁 の ない 穏やか な 部隊 も あっ た 。
鐵 道 聯隊 で は 人身 事故 防止 の ため 、 演習 出場 の たび に 古参 兵 が 初年 兵 全員 に ビンタ を 見舞い 緊張 さ せ て 、 注意 散漫 と なる の を 防い だ と 云わ れ て いる 。
私的 制裁 が 行わ れる 時刻 は 、 夕方 の 点呼 後 、 消灯 まで の 1 時間 程度 の あいだ で あっ た が 、 日 中 に 初年 兵 が しでかし た 失態 の 連帯 責任 を 問う 形 で 行わ れる 場合 と 、 以下 に 述べる 「 鶯 の 谷渡り 」 や 「 せみ 」 など を 初年 兵 全員 に 座興 で 強制 し て 、 その 出来栄え が 悪い 場合 に 「 びんた 」 を とる と 云っ た 形 で 行わ れる 場合 が あっ た 。
これ は 長時間 たつ と 疲労 する が 、 これ に 加え て 坂 に 差し掛かっ た ので 漕ぐ の を 早めろ とか 、 子供 が いる ので ベル を 鳴らせ と 云っ て 「 リンリン 」 と 口真似 さ せ たり 、 向こう から 上官 が 来 た から 敬礼 せよ と 注文 を つけ て 、 片手 を 机 から 離し て 敬礼 する 途端 に 体 が 傾く の を 慌て て 、 また 支え 体勢 を 立て直す 滑稽 な さま を 見 て 、 見物 の 古 年 兵 が 喜ぶ と 、 いう の も ある 。
「 編隊 飛行 」 は 複数 の 初年 兵 に 一斉 に 調子 を 取っ て 腕立て伏せ を さ せ 、 その さい 「 ぶんぶん 」 と 口 で 飛行機 の 爆音 を 真似 さ せ て 、 一斉 動作 が 乱れる と 叱責 する 。
初年 兵 掛 上等 兵 や 古 年 兵 が 初年 兵 全員 を 班 内 に 整列 さ せ て 、 その 日 の 些細 な 落度 を 咎め立て し て は ビンタ を とる 事 は 日常 的 に 行わ れ た 。
古 年 兵 の 威 を 知ら しめ 絶対 服従 状態 に 置く ため とも 、 また 日常 起居 動作 の 緊張 を 促す ため に と も 云う の で ある が 、 この よう な 緊張 状態 に 常に 置く こと で 、 戦場 で の 困難 な 状況 に 対処 できる 強い 精神 力 を つけ させる と 云う 教育 的 効果 が あり 、 更に 戦場 に 於け る 上級 者 の 命令 を 反射 的 に 実行 できる よう に する ため の 訓練 で ある と も 云え よう 。
軍隊 は 若者 を 鍛える 修業 の 場 で あり 、 初年 兵 時代 を 切抜け られ たら 、 その後 の 人生 に 於い て も 、 どんなに 苦しい 事 に あっ て も 我慢 でき 切抜け られる 度胸 が つく と 思う 初年 兵 が 多かっ た の で は ない か と 推測 さ れる 。