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『 不思議 の 国 の アリス 』 の 出版 にあたり 、 キャロル は 『 パンチ 』 の 看板 画家 ジョン ・ テニエル に その 挿絵 を 依頼 し た 。

テニエル を 紹介 し た の は 同誌 の 編集 者 トム ・ テイラー で あっ た が 、 テニエル に 依頼 する よう 勧め た の は キャロル の 友人 ロビンソン・ダックワース で あっ た らしい 。

挿絵 の 依頼 料 を 含め 出版 費用 を すべて 自費 で まかなっ て い た キャロル は 、 挿絵 を 自分 の イメージ に 限り なく 近い もの に する ため に 細か な 指示 を 行い テニエル を 閉口 さ せ た { refnest | group =" 注釈 "| キャロル の 挿絵 に対する こだわり を 示す エピソード として 次 の よう な もの が ある 。

『 シルヴィー と ブルー ノ 』 ( 1889 – 1893 年 ) の 挿絵 を 受け持っ た ハリー ・ ファー ニス が 、 できあがっ た 挿絵 を 持っ て いく と 、 キャロル は 拡大鏡 を 持ち出し て 1 平方 センチ あたり の 線 の 数 を 数え て テニエル の それ と 比較 し た と いう 。

また キャロル は 二つ の アリス の 本 の 制作 経験 を もと に し て 挿絵 画家 に関する 論文 か 小 冊子 を 書く 考え を ファー ニス に 漏らし た こと が あっ た が 、 これ は 結局 書か れ ず じ まい と なっ た 。

彼ら の 間 の やりとり を 示す 書簡 は 残っ て い ない が 、 大まか な 経緯 は キャロル の 日記 から 知る こと が できる 。

日記 の 記述 に よる と 、 キャロル は 『 不思議 の 国 の アリス 』 の 、 挿絵 を つけ たい 部分 の ゲラ刷り が できる と いち早く テニエル の もと に 送っ て い た ( つまり テニエル は 手書き 本 『 地下 の 国 の アリス 』 で は なく 、 はじめ から 『 不思議 の 国 の アリス 』 の テキスト を 参照 し て い た らしい ) 。

また 本 の 版 形 が 途中 段階 で 変更 に なっ た 際 に は 、 キャロル は テニエル を 訪問 し て 変更 の 了解 を 得 て おり 、 キャロル が テニエル に対して 一方 的 に 指示 を 与える だけ で なく 、 その 仕事 を 尊敬 し 進ん で 忠告 を 受けよ う と し て い た こと が わかる 。

6 年 後 に 出版 さ れ た 続編 『 鏡 の 国 の アリス 』 において も 、 キャロル は はじめ から テニエル に 挿絵 を 依頼 し た が 、 テニエル は 当初 多忙 を 理由 に 断り 、 { 仮 リンク | リチャード ・ ドイル | en | Richard Doyle ( illustrator )} や ジョゼフ ・ ノエル ・ ペイトン など 他 の 画家 を キャロル に 紹介 し て いる 。

しかし 前者 は 最近 の 絵 が キャロル の 気に入ら なかっ た ため に キャロル から 見限り 、 後者 は 病気 で 仕事 が でき ない 状態 で 、 手詰まり に なっ た キャロル は 最終 的 に 、 テニエル に 仕事 を 依頼 し て いる 出版 社 へ の 違約 金 を 向こう 5 ヶ月 分 払う という 条件 で ( さらに 「 暇 を みつけ て は 」 という テニエル から の 条件 も つけ て ) 、 テニエル に 挿絵 を 引き受け て もらう こと に なっ た ( この よう に しぶしぶ ながら に 引き受け られ た 『 鏡 の 国 の アリス 』 の 挿絵 の 仕事 は 、 皮肉 な こと に 今日 で は テニエル の 最高 傑作 として 認識 さ れ て いる ) 。

『 鏡 の 国 』 は 前 著 より も 二 人 の やりとり の 内容 が はっきり と わかっ て おり 、 例えば キャロル は 、 女王 と なっ た アリス の スカート に クリノリン が 使わ れ て いる こと に 強く 抗議 し 、 すでに 出来上がっ て い た いくつ か の 版 を 没 に し 描き 直さ せ て いる 。

もっとも 白 の 騎士 ( これ は キャロル 自身 を なかば モデル に し た キャラクター で あっ た ) を 老人 として 描か ない で くれ という 頼み の ほう は 聞き入れ られ ず 、 結局 白髪 の 老人 の 姿 の まま で 出版 さ れる こと に なっ た 。

また テニエル も キャロル の 指示 ばかり 受け て い た わけ で は なく 、 逆 に 本文 に 文句 を つけ て いくつ か の 文章 を 変更 さ せ て いる 。

そんな もの を どう 描け ば いい の か 見当 が つか ない 、 という の が その 理由 で あっ た が 、 また 挿話 として も おもしろい と は 思え ない と 言い 添え て おり 、 キャロル も この 忠告 を 受け入れ て 削除 に 応じ た らしい 。

この 挿話 を 書い た ゲラ刷り は 1977 年 に なっ て 発見 さ れ た が 、 たしかに この 挿話 は 生彩 を 欠い て おり 、 テニエル の 批評 眼 と キャロル の 判断 が 正しかっ た こと が 確認 できる 。

しかし この 2 冊 の 本 で の キャロル と の 共同 作業 は 、 テニエル を すっかり 疲弊 さ せ て しまっ た 。

後年 、 キャロル が あらた な 著作 ( どれ か は わかっ て い ない ) の 挿絵 を テニエル に 依頼 し た とき 、 テニエル は 「 奇妙 な こと に 、 『 鏡 の 国 の アリス 』 の 仕事 を 仕上げ て 以来 、 私 から 本 の 挿絵 を 描く 能力 が なくなっ て しまっ た よう です 」 と 述べ て 依頼 を 断っ て いる 。

『 アリス 』 の 挿絵 の 原版 作成 に 用い られ た と 見 られる 、 ブリストル 紙 に 描か れ た テニエル の 下絵 で は 、 なぜ か 細かい 点 まで 克明 に 仕上げ た 線描 画 と なっ て いる が 、 おそらく 仕上げ 作業 に 入る 前 に キャロル に 確認 を 取る ため だっ た か 、 あるいは すでに 原版 に 描き 込ん だ 絵 の 補足 を する ため に 彫 版 師 に 送っ た もの で あろ う 。

兄弟 は のち に 、 両 『 アリス 』 の 挿絵 について 、 キャロル が テニエル の 線描 画 に も 木版 画 に も 繰り返し クレーム を 入れ た と 回想 し て いる が 、 最終 的 に は キャロル の 側 に 後 に ひく よう な 不満 は 残ら なかっ た よう で ある { refnest | group =" 注釈 "| 従来 、 テニエル の 挿絵 の なか で 、 キャロル の 気 に 入っ た もの は ハンプティ・ダンプティ の 絵 だけ だっ た 、 と いっ た こと が 言わ れ て き た 。

しかし キャロル が そんなに テニエル に 失望 し て い た の で あれ ば そもそも 続編 の 挿絵 の 依頼 を 彼 に 持ちかける はず が ない 、 という こと を 考えれ ば 説得 力 の ない 話 で ある と わかる 。